人材開発支援助成金・人材育成支援コース(有期実習型)の活用方法を解説

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契約社員やパートタイマーに社員教育をさせ、スキルアップした上で正社員に転換させたい。でも研修にかかる費用は抑えたい。

そんなお悩みをお持ちの経営者様、人事ご担当者様必見の「人材開発支援助成金・人育成支援コース(有期実習型訓練)」について今回はご紹介いたします。

人材開発支援助成金は、従業員のスキルアップに向けた研修や、有期雇用の従業員を正社員転換させるために行なった訓練に対して活用できる助成金のため、研修に必要な経費を抑えることが可能です。

今回は人材開発支援助成金・人材育成支援コース(有期実習型)について助成金額・活用の条件・申請の具体的な流れや注意点について解説いたしますのでぜひご確認ください。

なお、助成金は複雑な制度かつ審査が厳格に行われます。本記事では助成金の全体像および活用に向けた解説となっております。もし人材開発支援助成金の利用を具体的に検討されている経営者・人事ご担当の方は、ぜひ当社へご相談ください。

人材開発支援助成金 人材育成支援コース(有期実習型)とは?活用すべきタイミングとは?

人材開発支援助成金とは、従業員に対して職務に関連した専門的な知識及び技能を習得させるための社員教育(以下、訓練と記載します。)を計画的に実施した企業に対し、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する制度です。

人材開発支援助成金は、2024年2月時点で7つのコースに分かれており、そのうちのひとつが「人材育成支援コース」と呼ばれています。

その中でも、人材育成支援コースはさらに3つに枝分かれしております。

下図に示したとおり、有期雇用の従業員を正社員に転換させるために行なう訓練を「有期実習型訓練」といい、本記事ではこの有期実習型訓練に特化して解説いたします。

本助成金制度を活用すべきメリット、タイミングとは?

人材開発支援助成金・人材育成支援コース(有期実習型)は、主に

  • 社員教育をとおして、有期雇用従業員の能力や適性を知った上で正社員に転換させたい。
  • 社員教育制度を設け、自社の有期雇用従業員のモチベーションを上げたい。
  • 有期雇用従業員のスキルアップに活用できる助成金を効率よく利用したい。

こういったお考えの企業にこそ活用を検討いただきたいものになります。

また、本助成金では有期雇用従業員の能力・適性が会社に見合った人材か否か、訓練を通じて確認することができる点がメリットとしてあげられます。加えて、その訓練にかかった費用も助成されるため「人材の強化」を効率的に実施できるのです。

そのため優秀な従業員を雇いたい、良質な企業体制を構築したい方に是非活用していただきたい制度といえます。この有期実習型訓練は、他の助成金(キャリアアップ助成金)へ移行することができ、効率よく助成金を利用できることもチェックしておきましょう。

受給できる助成金額・助成率は?

人材開発支援助成金・人材育成支援コース(有期実習型)は

  • 経費助成(賃金要件又は資格等手当要件による加算あり)
  • OJT実施助成
  • 賃金助成

上記3つの観点で助成金の受給が見込める制度となります。

では、各助成制度についてそれぞれ確認してみましょう。

経費助成・OJT実施助成

「有期実習型訓練」は職場外研修(Off-JT)と職場内研修(OJT)の2種の訓練を組み合わせる必要があり、それぞれの訓練に要した費用について助成金の対象となります。

賃金助成

訓練期間中であっても従業員に給与を支給することが本制度の条件となっていますが、その訓練期間中の所定労働時間内の賃金が、賃金助成の対象となります

賃金要件又は資格等手当要件

本制度の訓練終了後、対象従業員の賃金や資格手当などを一定額上昇させた場合に、後日追加で申請ができる助成金です。

助成金の上限額

助成額には経費助成、賃金助成ともに上限も設定されており、その上限額は以下のとおりです。

経費助成限度額(1人当たり)

賃金助成限度額(1人1訓練当たり)

1,200時間が限度時間となります。

助成の受給事例

人材開発支援助成金・人材育成支援コース(有期実習型)の活用により、どの程度助成金の受給が見込まれるのか、具体的な事例を下記紹介いたします

支給に関する制限や注意点

人材開発支援助成金・人材育成支援コース(有期実習型)の助成対象となる訓練等の受講回数は、1労働者につき1年度3回までです。

加えて、1事業所または1事業主団体等が1年度に受給できる助成額は、1,000万円が限度額となりますのでご注意ください。

助成対象となる従業員・事業主の条件とは

人材開発支援助成金・人材育成支援コース(有期実習型)を利用するには、企業・訓練対象従業員ともに以下の条件を満たす必要があります。

対象となる従業員

人材開発支援助成金・人材育成支援コース(有期実習型)の対象となる従業員の主な条件は、下記となります。

  • 従来から雇用されている有期契約労働者等または新たに雇い入れられた有期契約労働者等であること
  • 訓練期間中において有期契約労働者等であり、訓練の終了日または支給申請日において、被保険者であること
  • 正規雇用労働者等として雇用することを約して雇い入れられた労働者(人材育成訓練の修了後に人材育成訓練の評価結果に基づき、正規雇用労働者等への転換を検討することを予定して雇い入れられた労働者は除く)ではないこと
  • 訓練を受講した時間数が、実訓練時間数の8割以上であること(認定実習併用職業訓練及び有期実習型訓練については、OFF-JTは実訓練時間数の8割以上、OJTは総訓練時間数のうちOJTの時間数の8割以上であることが必要)

より詳細な条件についてはこちらをご確認ください。

対象となる事業主の条件

人材開発支援助成金・人材育成支援コース(有期実習型)を活用できる事業主として、主に下記の条件を満たす必要があります。

  • 雇用保険適用事業所の事業主であること
  • 有期契約労働者等を雇用する又は新たに雇い入れる事業主であること
  • 本制度の計画届提出日の前日から起算して6か月前の日から支給申請書の提出日までの間に、事業所において、雇用する雇用保険被保険者を解雇した事業主でないこと。
  • 従業員に職業訓練等を受けさせる期間中も、当該従業員に対して賃金を適正に支払っていること

より詳細な条件についてはこちらをご確認ください。

助成金を受けるための必要な手続き、注意点とは

人材開発支援助成金・人材育成支援コース(有期実習型)は、活用開始の段階で「基本型」と「キャリアアップ型」に分岐します。

訓練対象者を新たに雇い入れる場合は「基本型」、訓練対象者を既に雇用している場合は「キャリアアップ型」の流れとなり、キャリアコンサルティングを実施するタイミングがそれぞれ異なりますので注意が必要です。

本制度利用開始から助成金支給までの手続きの流れは、下図のとおりとなりますのでご確認ください。

それでは、各手続きを進めるにあたって流れや注意点について解説いたします。

<事前準備>キャリアコンサルティングの実施

本訓練を行なう場合、キャリアコンサルティングの実施(キャリアコンサルタントによる面談、そしてジョブ・カードの作成)が必須となります。

キャリアコンサルティングとは?

キャリアコンサルティングとは、専門資格を有した「キャリアコンサルタント」が行う面談で、面談対象者(本制度でいう訓練受講者)のキャリアを通じた将来目標を明確化することを目的として行う面談です。

面談対象者は「ジョブ・カード」を作成し、事業主が作成した訓練カリキュラムに基づき、キャリアコンサルタントによる面接を受け、訓練の必要性の有無について確認を受けます。

ジョブ・カードとは?

ジョブ・カードとは、キャリアコンサルティングを実施する際にコンサルタントに提出する書類です。簡単に述べると「面談者の履歴書」のようなものです。

この書類をもって、コンサルタントが今回実施する訓練の必要性を判断します。このジョブ・カードは指定された書式があり、厚生労働省のホームページより入手できますので、ご確認ください。

なお、助成金申請時における添付書類として下記が必要になります。

  • ジョブ・カード様式1-1(キャリア・プランシート)
  • ジョブ・カード様式2(職務経歴シート)
  • ジョブ・カード様式3-1(職業能力証明(免許・資格)シート)
  • ジョブ・カード様式3-2(職業能力証明(学習歴・訓練歴)シート(写)

対象とならないOFF-JT訓練内容の把握

実施予定のOFF-JTが本制度の助成対象であるかを事前に確認することも必要です。

本制度の訓練は「汎用的でかつ専門的なスキルの習得」を目的としています。

必ずしも、事業外の訓練を受講する、教材を購入しなければならない、というわけではありません。訓練に沿ったレジェメ等を自社で作成し、それをOFF-JTで使用することも可能ですが、以下の事象にあてはまる場合、助成対象外の訓練と判断される可能性がありますので、注意が必要です。

①計画届作成時・提出時の注意点

指定された書式にて計画届を作成し、「訓練開始日から起算して1か月前まで」に所轄の労働局または助成金センターへ提出してください。

先に述べたキャリアアップ型の場合は、提出期日を考慮してキャリアコンサルティングを行なう必要があります。

訓練時間について

なお、有期実習型の訓練の場合、以下の条件を満たす必要があります。

上記条件を満たした訓練カリキュラムを組む必要がありますが、要件を満たすか否かの計算式が記載された指定の書式があります。そちらを活用して計画時間を算出することができます。

参考:人材開発支援助成金(人材育成支援コース) 有期実習型訓練に係る事前確認書

職業能力証明(訓練成果・実務成果)シート作成

正式な書式名は「ジョブ・カードの様式3-3-1-1:企業実習・OJT用」といい、OJTの成果を評価するために必要な書類となっており、計画届時に提出が必要な書類となっています。

証明シートの評価項目は、OJTの訓練に即した内容である必要があり、訓練を行なう自社で設定します。

評価厚生労働省のホームページにて業種別のサンプルがあり、そちらを使用するか、または自社独自の評価内容を作成することも可能です。(自社独自の項目を設定する場合は一定の条件があります)

以下、リンク先をご参照ください。

参考:厚生労働省「ジョブ・カード様式3-3-1-1職業能力証明(訓練成果・実務成果)シート(企業実習・OJT用)について

訓練実施時の注意点

次に、訓練を行う際の注意点として

  • 訓練時間等の変更
  • 訓練時間数の管理
  • 報告日誌の作成

について解説いたします。

訓練時間等の変更について

計画届提出後は、計画に沿って訓練を開始するのが原則です。訓練中に実訓練時間数、訓練予定者の人数の変更、または訓練内容に変更が生じる場合は、当該訓練開始前までに変更届を提出する必要があります。

変更届を提出せずに変更後の訓練を実施した場合、当該部分については支給対象外となる可能性がありますので必ず注意しましょう。

訓練時間数の管理について

OFF-JTは実訓練時間数の8割以上、OJTは総訓練時間数のうちOJTの時間数の8割以上実施する必要がありますので、助成金の条件を満たすよう、「8割」に注意し、訓練の時間管理を行なってください。

「訓練とされない時間」を把握

訓練中であっても以下の時間は助成金支給の対象外となります。訓練後に作成する実施報告書にも以下の時間帯は除いて実訓練時間を算出します。

報告日誌について

訓練を行った日ごとに、訓練対象者は日誌を作成してください(下図参照)

◆OFF-JT報告書

報告書には訓練時間、訓練内容(計画届で提出したカリキュラムに沿った内容である必要があります)、訓練実施者の証明、そして訓練を受けた従業員のサインが必要となります。

◆OJT実施状況報告書

訓練後、ジョブ・カードを使用し対象従業員を評価

先に述べたジョブ・カードを使用して、訓練対象者本人の自己評価および評価責任者の評価を受けてください。この評価責任者は、訓練対象者の上司といった評価下すのにふさわしい処遇の方が行うのが一般的です。

対象従業員を正社員へ転換時の注意点

本制度支給申請に正社員へ転換させる必要があります。

本制度の経費助成を高い助成率(70%)で受けたい場合は、必ず支給申請日よりも前に当該従業員の正社員化を行なってください。

もちろん、支給申請日後に正社員転換となった、または訓練は行ったが、正社員に転換するのは適切でなかった場合も経費助成は受けられます。(その場合の経費助成は60%になります)

支給申請提出時の注意点

人材開発支援助成金・人材育成支援コース(有期実習型)の活用時の注意点ですが、

  • 署名が必要な書類がある
  • 支給申請時に提出期日がある

特に上記2つは意識しておきましょう。

署名が必要な書類もあり、提出書類が多い

申請時に提出する書類は、約30種類にもおよびます。

また、OFF-JTを事業外で行った場合は、その訓練事業会社へ本制度に係る承諾書の記入を依頼したり、訓練を行なった従業員のサインが必要になったりと、必要書類の揃えるために想定以上の時間がかかる場合もあります。

支給申請の提出期日

訓練終了日の翌日から起算して2か月以内に必要書類を労働局または助成金事務センターへ提出してください。先にも述べましたが、提出書類が多いため、申請手続きは時間に余裕を持って対応することが重要です。

支給決定

支給審査の上、支給の可否が決定されます。

審査には時間を要し、数か月経過後に訓練について追加書類の提出を求められるケースもありますので、訓練時に発生した書類等は支給決定の可否があるまで保管し続けることをおススメいたします。

訓練後にも活用できるキャリアアップ助成金

本訓練後、キャリアアップ助成金制度に接続することができ、効率よく助成金を受給することができます。

対象従業員を正社員化し、キャリアアップ助成金の正社員化コースを申請する場合は、本訓練で届け出た「訓練実施計画届」の作成・提出をもって、キャリアアップ助成金(正社員化コース)における「キャリアアップ計画」とみなすことができます。

キャリアアップ助成金については過去の記事で解説をしておりますので、是非ご覧ください。

加えて、キャリアアップ助成金の要件を満たす賃金上昇を行なうと、本制度の「賃金要件・資格等手当要件」をも満たすことになりますので、本制度の助成金もプラスで追加受給することが可能です。

まとめ

今回は人材開発支援助成金、有期実習型訓練について解説いたしました。
人材育成をとおして、自社の有期雇用従業員のキャリアアップを図りたい企業にとっては魅力的な制度となっております。

一方で、本制度に限らず、助成金の活用するためには書類の作成や期日管理は非常に煩雑になります。本制度または他の助成金に興味がある方、活用を検討している方は是非、当社へご相談ください。

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