有給ばかり取る社員へ対応する方法は? 労働倫理と企業文化を踏まえて社労士が解説

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有給ばかりとる社員

情報化社会や働き方改革をきっかけに、社員の方の「労働法への意識」は高くなっていることについて、経営者・人事労務担当者の方も感じることはないでしょうか。

特に「有給休暇」を巡るトラブルは近年増えているように感じます。弊社でも顧問先の企業様より

  • 「有給休暇の権利ばかり主張する従業員がいて困っている」
  • 「有給休暇を取ることは良いが、周りを見ずに休んでばかり。どうすればいいのか」

このようなお悩み・相談ごとを受けることがしばしばあります。

有給休暇は、ワークライフバランスの観点からも、取れるときはしっかりと取得し、仕事への糧とする制度ではありますが、労働倫理・企業実態を勘案する必要もあります。

経営者として「勿論休めるのであれば休んでいいが、周りのメンバー・業務量はしっかりと調整して欲しい」とお考えの方も多いと推察しております。

今回の記事では、有給休暇の取得が個人と組織に与える影響、そしてそれを取り巻く社会的な認識の変化に焦点を当て、健全な有給休暇の文化を築くための制度について解説したいと思います。

なお、年間10日以上の有給休暇が付与される社員・従業員に対しては、5日の有給休暇を取得させる義務が企業に課せられています。下記コラム記事で詳しく解説していますので、併せてご一読ください。

有給を「使い切る」ことは非常識なのか?

有給休暇は、労働基準法により一定の勤務実績に応じて付与されるものです。利用方法も従業員個人に委ねられていますので、

  • 有給休暇を使い切ること
  • 有給休暇を使わないこと

どちらも法的には問題ありません。一方で「付与された有給休暇をすぐに使い切る」行為については、企業風土や文化、現場状況によって見方が変わります。

特に日本のように勤勉さ・真面目さ・周囲との協調性が美徳とされる社会では、全ての有給休暇を消化することがためらわれることも少なくありません。

しかし、仕事とプライベートのバランスを重視する風潮が高まる中、有給休暇の取得は従業員の権利であり、またその健康やモチベーション維持にも繋がる重要な要素でもあります。

まずは有給休暇を「使い切る」という行為が持つ多様な意味合いや、それに対する社会的な認識について見ていきましょう。

有給休暇の基本知識

有給休暇とは、労働者が自由に使える休暇日のことです。

労働基準法によると

第三十九条 使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。

引用元:労働基準法第39条

と規定されています。そのため基本的には「入社日」から

  • 6か月以上継続して勤務していること
  • 全労働日の8割以上出勤していること

これを満たす従業員については、有給休暇の権利が発生することになります。

有給休暇を取得する文化と現状

世界的に見ると、有給休暇を取得する文化には大きな差があります。

日本では長らく「休まないことが美徳」という風潮も一定ありましたが、近年ではワークライフバランスの重要性が強調され、有給取得を促進する動きも見られます。

それでもなお、有給休暇を使い切ることは企業の状況や文化によって受け取られ方が異なります。

「有給使い切る」という行動と経営者の心理

有給休暇を使い切る行動の背後には、自己管理と労働観の変化が見られます。自分の時間を大切にし、仕事とプライベートのバランスを取ることの重要性が認識されつつあると言えます。

一方で、周囲のメンバーの業務量であったり、自身が関与している取引先との状況を勘案できていないこともあり、経営者の意識として「仕事はしっかりとこなせているのか?」「何度も休んでいるが周りに迷惑は掛かっていないのか?」といった悩みのタネに変わってしまうのです。

有給ばかりとる社員の実態と影響

有給休暇を頻繁に取得する社員の存在は、職場における様々な反響を呼びます。

一見すると、業務への影響や同僚との負担の偏りが懸念されがちですが、有給休暇を積極的に利用する社員の実態を深掘りすることで、その背後にある個人の価値観や仕事に対する姿勢、さらには職場の文化や制度に対する示唆も見えてきます。

有給を頻繁に取る社員のケーススタディを通じて、その実態と、個人、チーム、組織に与える影響を包括的に考察してみましょう。

毎月有給を取る社員のケーススタディ

毎月有給を取る社員は、計画的に休暇を使い、ストレス管理や趣味の時間を確保しています。

毎月1日程度の有給休暇取得であれば、特段問題のない会社も多いと思いますが、このような行動が周囲にどのような印象を与えるかは、職場の文化や個々の仕事の負荷によって異なる点は念頭においてください。

連続して有給を取ることの影響

連続して有給を取る場合、仕事の進行に影響が出る場合もあります。特に、

  • 小規模なチームやプロジェクトの締め切りが迫っている
  • 自身が担当している顧客の優先度の高い対応

といった仕事状況の場合、周囲のメンバーへの負担も高まりますので、有給休暇を取得しようとする社員へ一定配慮を求める必要があります。

有給取得の多さがチームに与える影響

有給取得の多さは、チームワークや業務の分担に影響を及ぼします。

連続して有給休暇を取ることの影響と似ていますが

  • 有給休暇を多く取得することでチーム業務やプロジェクトの進行速度への影響
  • 担当顧客から「◯◯さんにまた連絡がつかないのですが」といった関係性の悪化

このようなネガティブな要素が考えられます。

一方で、有給休暇を取得する文化が根付くことで、全員がリフレッシュし、長期的なパフォーマンス向上につながる場合もあります。

管理者の立場: 有給取得をどう見るべきか

管理者にとって、部下の有給休暇取得は複雑な課題になり得ます。

心身のリフレッシュやモチベーション維持を促すためには有給休暇は効果的ですが、他方で業務の連続性やチームのパフォーマンスを保つことも忘れてはいけません。

管理者の立場から有給取得をどのように捉え、バランス良く管理していくかは、組織の健全な運営に不可欠な要素となります。

有給休暇取得に対する管理者の理解を深め、適切な対応策やバランスの取り方について考えていきますので、ぜひ今後の部下とのコミュニケーションの参考にしてください。

有給取りすぎ社員に対する注意の仕方

管理者は、有給取得が業務に与える影響を考慮しつつ、従業員の休暇権利を尊重する必要があります。注意の仕方としては、個々の事情やチームの状況を理解した上で、公平性を持って対応することが重要です。例えば

  • チームワークの重要性を強調
    • すべてのメンバーが責任を共有し、お互いをサポートすることの重要性を話し合う。有給休暇は権利であるものの、チーム全体の負担が均等になるよう配慮することが求められると説明する。
  • 代替案の提案
    • 有給休暇の計画をもう少し前もって行うよう提案し、業務に与える影響を最小限に抑えるための戦略について一緒に考える。可能であれば、ピーク時を避けるように勧めるなど、柔軟な対応を検討する。

上記のようなコミュニケーションを行いましょう。

「有給取りすぎ」を防ぐための方策

有給休暇は大切な制度ですが、企業としても周りへの配慮をした上で休んでほしいと言うのが本音ではないでしょうか。そのため

  • 有給休暇の計画的な取得を促す制度の導入
  • 有給休暇の取得タイミングを調整する社内ルールの導入

上記のような取り組みはオススメいたします。

有給休暇の計画的な取得を促す制度の導入

付与されている年次有給休暇の5日を超える分について、労使協定を結ぶことで、計画的に休暇取得日を割り振ることが可能です。ることができる制度のことをいいます。

この制度を利用することで、有給休暇の一定の日数を会社側でコントロールできるため、業務の閑散期に休んでもらうことが可能になります。

有給休暇の取得タイミングを調整する社内ルールの導入

月末などで、翌月に休暇希望がないのかカレンダーを回覧する制度なども有効です。有給休暇の取得をする際、問題となりやすい周囲のメンバーとの業務量やコミュニケーションを円滑にすることが可能で、

  • 公平性の向上
    • すべての従業員が同じ方法で休暇希望を提出することで、休暇の取得機会が公平に分配され、特定の時期に集中することを防ぎます。
  • 予測可能性の向上
    • 事前に休暇計画を知ることで、チームリーダーやマネージャーはリソースの割り当てやプロジェクトのスケジュール調整をより効果的に行えるようになります。

上記のようなメリットがあります。

健全な有給休暇の文化を築くために

健全な有給休暇の文化を築くことは、企業と従業員双方にとってメリットが大きい重要な課題です。

有給休暇の積極的な取得が従業員の幸福感と生産性を高めることは多くの研究で示されていますが、実際にそのような文化を構築するためには、経営層からの理解と支援、従業員への適切な教育、そして仕事と休暇のバランスを取るための具体的な施策が必要でしょう。

経営者からは、有給休暇の取得を促す考え方を明確にし、それを実践することで、従業員に休暇を取りやすい環境やルール設計が重要です。

一方で、従業員も自身の休暇がチームやプロジェクトに与える影響を考慮し、計画的に休暇を取得してもらう必要があります。

健全な休暇取得文化は、従業員が仕事と私生活のバランスを取り、ストレスを管理し、最終的には仕事への満足度とモチベーションを高めることもできるでしょう。

経営者と従業員が共に有給休暇の価値を理解し、その取得を支援する文化が根付けば、職場の雰囲気はより前向きなものとなり、企業全体としても競争力を高めることができると考えられます。企業が持続的な成長し、従業員に報酬や福利厚生として還元していくためには非常に重要なステップです。

弊社では、経営者・従業員双方が納得し、働きやすい文化形成のためのアドバイザリーを行っていますので、有給休暇に関連する課題やお悩みを抱えている経営者の方はぜひお気軽にご相談ください。

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