社会保険の加入条件とは?30時間を超えたり超えなかったりする場合の対応を解説

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社会保険は、労働者の健康や生活を守るための重要な制度です。

日本の社会保険には、広義的には健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険がありますが、「健康保険」と「厚生年金保険」を指すことが一般的です。

健康保険、厚生年金保険への加入条件は「労働時間の長さ」が影響しており、従業員を加入させるべきかどうか、頭を悩ませる経営者の方も多いのではないでしょうか。

今回のコラム記事では、社会保険の基本的な加入条件や、悩みのポイントになる「週30時間を超えたり超えなかったりする場合」の対応について詳しく解説します。

社会保険の基本条件と加入基準

従業員が安心して働ける環境を整えるための制度の一つに「社会保険」制度があり、

  • 健康保険
  • 厚生年金保険

この2つは一定の要件を満たすことで加入する義務が発生いたします。

企業の経営者や人事担当者にとって、従業員の社会保険加入は重要な責務ですので、しっかりと理解しておきましょう。

社会保険に加入するための基本的な条件

株式会社、合同会社、社会福祉法人といった法人事業主は、雇用している従業員の人数に関わらず社会保険の強制適用事業所となります。

また、個人事業所であっても常時5人以上の従業員を雇用していると農林漁業、サービス業などの場合を除いて強制適用の対象となり、社会保険への加入義務が発生します。

このような社会保険の加入対象となる事業所に雇用される場合、以下の条件を満たす従業員は社会保険への加入しなければなりません。

  • 週の労働時間
    • 1週の所定労働時間が一般従業員の4分の3以上
  • 月の労働日数
    • 1月の所定労働日数が一般従業員の4分の3以上

例えば、一般従業員の1週間の所定労働時間が40時間・一ヶ月の所定労働日数が20日の場合、

  • 週の労働時間は40時間×4分の3→30時間以上
  • 月の労働日数は20日×4分の3→15日以上

上記を超える働き方をする従業員は、パートタイマーやアルバイトの方であっても、社会保険に加入する必要があります。

週30時間が目安となる?

「週30時間を目安として労働時間を考えればいいのか?」と経営者の方からご相談をいただきますが、同じ事業所で、同じ業務に従事する一般従業員の所定労働時間および所定労働日数を基準に判断することになります。

一般的な働き方としては「1日8時間・週40時間」の会社が多いと思いますが、この場合は1週の所定労働時間が一般従業員の4分の3以上として「週30時間」がわかりやすい基準となると考えられます。

ただし、一般従業員の所定労働時間および所定労働日数が「1日8時間・週40時間」よりも少ない事業所であれば、目安となる時間も変動しますのでご注意ください。

社会保険加入のメリットとデメリット

従業員から「労働時間は伸ばしたいけど、社会保険には加入したくない。どうすればいいのか?」と相談を受けた経験のある経営者・人事労務担当者の方も多いと思います。

また「従業員を社会保険に加入させると、会社も保険料を負担しなければいけないので大変だ」と、資金繰りを不安に感じる方もいらっしゃるでしょう。

社会保険は、前述の通り労働時間の要件を満たすと必ず加入しなければならない制度です。

社会保険への加入について、企業側・従業員側のメリットとデメリットをしっかりと把握し、社会保険に加入させる条件で従業員を採用するのかどうか検討してください。

社会保険加入のメリット

  1. 企業側のメリット
    • 労働者の健康と安心を確保することで、労働意欲の向上や企業の信頼性向上につながる。
    • 離職率の低減が期待できる。
  2. 労働者側のメリット
    • 健康保険により、病気やけがをした際の医療費負担が軽減される。
    • 厚生年金保険により、将来的な年金受給額が増加する。
    • 雇用保険により、失業時の生活支援が受けられる。

社会保険加入のデメリット

  1. 企業側のデメリット
    • 社会保険料の負担が増加する。
    • 労働者一人当たりのコストが上昇し、中小企業にとっては経済的な負担が大きくなる可能性がある。
  2. 労働者側のデメリット
    • 手取り給与が減少する(社会保険料が控除されるため)。
    • 短時間労働者の場合、保険料負担が相対的に大きく感じられることがある。

社会保険への加入は、企業と労働者双方にとって重要な問題です。上記を確認しながら、労働条件を整理しておきましょう。

社会保険の加入条件に影響する労働時間について

労働時間は社会保険の加入条件そのものです。

一般従業員が「1日8時間・週40時間」の勤務を行う場合、パートやアルバイトは週30時間が社会保険の加入条件の目安になり、「社会保険に加入する要件を満たしているのかどうか」判断しなければなりません。

社会保険 30時間未満でも加入したい場合の対策

社会保険への加入において、一般的に週30時間の労働時間が発生するかどうかが鍵となりますが、パートタイマーの方から「社会保険に加入したい」と相談があった場合、会社としてどのように対応すべきでしょうか。

経営者・人事労務担当者として非常に悩ましい話ですが、下記2つの方法を検討してみましょう。

任意特定適用事業所の利用

厚生年金保険の被保険者が100人以下(令和6年10月以降は50人以下)の事業所であって、短時間労働者(例:パートタイマー)が社会保険に加入することについての労使の合意に基づき申し出を行うことで、任意適用事業所とすることができます。

任意特定適用事業所の申し出については、下記日本年金機構のWEBサイトから申請書類のダウンロードが可能ですのでご確認ください。

https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/ninnitokuteitekiyo.html

なお、任意特定適用事業所となる場合、1週間の所定労働時間または1月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3未満である方であっても、

  • 週の所定労働時間が20時間以上であること
  • 所定内賃金が月額8.8万円以上であること
  • 学生ではないこと

上記すべてに該当する従業員について、社会保険の加入対象となることができます。

個別契約の見直し

2つ目の方法は、労働条件の見直しです。

労働条件は、一度決めた後でも会社・従業員の双方の合意により、現在の労働条件を見直すことが可能です。

そのため、労働時間を週30時間以上になるように変更し、社会保険の加入条件を満たす形になります。

30時間未満により社会保険に加入しないリスク

一般従業員が「1日8時間・週40時間」の勤務を行う場合、週30時間未満の従業員は基本的に社会保険への加入ができません。

従業員からすると「保険料がかからないため、手取りが減らず得では?」と思うかもしれませんが、実際にはリスクがあります。

  • 健康保険に加入していない場合
  • 厚生年金保険に加入していない場合

上記の観点でリスクを解説いたしますので、労働時間について従業員の方と協議する際にはご参考ください。

健康保険に加入していない場合

病気やけがの際に医療費の自己負担が大きくなります。健康保険がないと、予期せぬ医療費が家計に大きな負担をかける可能性があります。

また、被扶養者として健康保険を利用している家族がいる場合、同時に喪失となりますので注意が必要です。

厚生年金保険に加入していない場合

厚生年金保険に加入していない期間が長くなると、将来的な年金受給額が減少します。

近年、2,000万円問題など定年までに備えておくべき資産が多額になっています。年金受給額が少なくなると、定年後の生活に大きな影響を与えるため、長期的な視点での対策が重要です。

週30時間を超えたり超えなかったりする場合の対応策

週30時間を超えたり超えなかったりする場合は、どのように取り扱うべきか」迷われる方もおられるのではないでしょか。

結論「雇用契約書の内容がどうなっているのか」確認し、社会保険の要件を満たしているのか否か判断することになります。

そのため、週によって30時間を超えたり、超えなかったりといった場合があったとしても、その時点で社会保険加入・喪失手続きが発生するわけではありません。

雇用契約書上で社会保険適用となる働き方となっているのであれば、週30時間未満の労働が連続したとしても社会保険の被保険者となります。

社会保険の加入条件に、労働時間は直接的に影響があります。従業員の方が安心して働けるように、企業と従業員が協力して最善の方法を見つけることが重要です。

まとめ

今回の記事では社会保険の加入条件や週の労働時間が30時間を前後する場合の取り扱いについて解説をいたしました。

平成28年10月から、短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大実施から、法改正が進んでおります。経営者・人事労務担当者の方からすると、自社は問題があるのか、不安になるテーマかと思います。

少しでも気になる部分がありましたら、社会保険手続きの専門家である社会保険労務士法人ステディまでお気軽にご相談ください。

労働時間の管理と社会保険の適用を最適化し、従業員の福利厚生を向上させる施策をご提案させていただきます。

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