社会保険調査は厳しい? その理由と調査の流れを解説!

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一定の要件を満たす従業員は、健康保険や厚生年金といった社会保険に加入させる必要がありますが、この社会保険について年金事務所の調査が入ることをご存じでしょうか?

調査実施の連絡は、毎年6月中旬に日本年金機構から送付される社会保険の算定基礎届(定時決定)のお知らせとともに調査実施に関する通知文書が同封されていることが一般的です。

従業員からタレコミがあって実施される労働基準監督署の調査と違い、定期的なスパンで調査が入るのがこの社会保険調査ですが、起業して間もない会社様にとっては、初めて通知できっと驚かれることと思います。

弊社でも社会保険調査の相談をよくいただきますが、税務署の調査ほどではありませんが調査内容は年々厳しくなっているように感じます。

そこで今回は、社会保険調査の目的や調査の流れ、不備があった場合はどうするのか、についてご説明いたします。

社会保険調査とは?その調査目的とは?

社会保険とは、

  • 従業員が業務外の事故等に遭った際に保険診療等を行なう「健康保険」
  • 従業員が老齢や障害、死亡で働けなくなった際の所得保障を行なう「厚生年金」

上記2つの総称です。

健康保険および厚生年金保険は、ある一定の条件を満たした従業員を雇っている場合、会社は必ず加入させなければなりません。また、毎月納付する保険料も従業員の給与額に応じて決定されます。

納付する保険料は、従業員が病気等で働けなくなった際の「所得保障の額」に反映されるため、従業員の報酬に見合った保険料を算定する必要がありますし、政府としても保険給付を行なうための貴重な財源となります。

会社が適切に従業員を保険加入させているか、毎月納める保険料に誤りがないかを確認することが年金事務所の調査目的となります。

調査は厳格化している?もし調査された書類に不備があったら?

社会保険の調査は、各都道府県・市区町村にある年金事務所により実施されます。冒頭に申し上げた通り、労働基準監督署の調査と異なり定期的なスパンで実施されることが一般的ですが、調査内容は厳しくなっているように感じます。

調査内容が厳しくなっている背景や、もし調査された書類に問題・不備があった場合どうなるのか具体的な事例を元に解説いたします。

社会保険の調査は厳格化?その理由とは?

2022年のパートタイマー社会保険適用拡大の法改正があって以降、社会保険調査は厳格化傾向にあると感じています。

少子高齢の進展に伴い、フルタイマーだけでなく短時間で働くパートタイマーからも社会保険料を徴収し、保険加入の裾野を拡げたいという政府側の狙いがあるようにも感じとれます。

2024年10月にも更に適用拡大の法改正があるため、パートタイマーの社会保険に関しては年金事務所は今後も細かくチェックを行なっていくでしょう。

経営者の皆様、企業の人事ご担当者様におかれましては、パートタイマーを含む全従業員の加入の必要性に対し、正しい知識を得て、適切な社会保険手続き、管理を行なっていく必要があります。

参考:社会保険適用対象となる加入条件|厚生労働省 | 社会保険適用拡大 特設サイト

調査の結果、不備があったらどうなる?

社会保険の調査時に、よくある不備のケースを下記紹介いたします。

  • パートやアルバイトで、加入義務のある従業員の資格取得を行っていなかった
  • 基本給や手当の金額を見直したあとに、月額変更の手続きを行っていなかった
  • 賞与を支給しているが、賞与支払届の提出ができていなかった
  • 副業等で2社以上の会社から給与を受けており、それぞれの会社で社会保険加入要件を満たしているが、その手続ができていなかった(保険料を合算して決定できていなかった)
  • 75歳以降もフルタイムで働く従業員がいる場合、受給する年金との調整のための届出(算定基礎届)をする必要があるが、できていなかった(役員でよくあるパターン)

このように、本来は会社で行う手続きが漏れてしまっている場合、基本的に、条件を満たした時期まで遡って(最大2年間)の訂正手続き(遡及適用)が必要となります。

例えば、従業員の加入漏れがあり遡及することとなった際、その従業員の月給が20万円(40歳未満)であった場合、社会保険料は毎月約5.5万円であり、2年間の遡及分は約130万円になります。複数名の場合は、さらに人数分を掛けることにより未払いの社会保険料は膨大な額になります。

また、発覚を恐れて調査を無視、拒否することは原則として認められません。
悪質な場合は6か月以下の懲役または50万円以下の罰金に処される場合もあります。その他、調査員に対して虚偽の報告をした場合にも罰せられるので、誠実に対応することが必要です。

社会保険調査が入るタイミングは主に3つ

年金事務所が行う社会保険調査では、主に3つのタイミングで実施されます。

  • 会社が社会保険に新規加入したとき
  • 加入後の定期調査
  • 社会保険に未加入の事業所への加入勧奨

調査は突然実施されるケースが多いため、自社であればどのタイミングで実施される可能性があるのか事前に確認しておきましょう。

会社が社会保険に新規に加入したとき

社会保険に加入したばかりの会社に、新規適用後半年~1年の間に調査が入ることがあります。

新規適用で手続きに不慣れな部分もあるだろうということで、不備がないか年金事務所が確認を行ないます。

加入後の定期調査

3~5年に一度のスパンで実施される定期の調査です。毎年7月に実施する「算定基礎届」提出時期に実施されます。

「従業員の資格取得漏れ」、「給与額が適切か」等、社会保険に関する様々な要素が調査されます。

参考:日本年金機構「定時決定(算定基礎届)

社会保険に未加入の事業所への加入勧奨

社会保険の適用が必要であるにも関わらず、適用手続きを行っていない会社に対し、加入推奨や状況確認を行なうための調査です。

法令上、株式会社をはじめとする法人の会社はフルタイムの従業員を1人でも雇用させていれば、「会社」を強制的に社会保険適用事業所としなければなりません。また、法人でなく個人事業主である場合でも一定の条件に該当すれば、強制適用事業所となります。

この強制適用事業所になることで、その会社で雇用されている従業員は保険加入者(“被保険者”といいます)となるので、会社がまず社会保険の適用事業所として適切な手続きを踏んでいるのかを年金事務所はチェックします。

社会保険調査の調査内容とは?

年金事務所が調査する内容として主に

  • 社会保険加入漏れの有無
  • 社会保険加入の時期は適切か
  • 届出書類の適正な提出確認
  • 賞与の支払届出の提出確認

上記4つの点があげられます。

社会保険への加入が適切にできていなかった場合、保険料の納付額にも影響があります。どういった観点で年金事務所の調査が行われるのか把握した上で、自社の社会保険加入状況に問題がないか確認しておきましょう。

1つ目:社会保険加入漏れの有無

新規入社(フルタイムの従業員)が発生した場合、入社後5日以内に資格取得の手続きを行なう必要があります。

その他にも、入社当時は短時間労働のパートタイマーであったため、社会保険の加入除外であった者が、週の所定労働を長くしたことで社会保険の加入資格を取得した、というパターンもあります。(加入条件については後述します)

そういったケースが発生した際も取得漏れがないか、年金事務所の確認が入ります。

2つ目:社会保険加入の時期は適切か

社会保険加入が必須の従業員は、その条件に該当することとなった初日から社会保険の資格を取得します。

フルタイムの正社員であれば入社年月日が資格取得日となり、「試用期間は社会保険に加入しない」という取扱いは認められていません。

パートタイマーであれば、社会保険の加入条件を満たしたときから加入することになります(※)。ただし、条件を満たしたからといってすぐさま加入しなければならないわけではなく、「週所定労働時間が、フルタイマーの2/3以上となった」かつ「3か月継続している」場合は、その3か月を経過した時から資格を取得します。(1か月間のみの労働時間増加であれば加入の必要はありません)

上記のようなケースで加入資格を得た従業員の取得日に間違いがないか、適切な手続きが行われているかを年金事務所は調査します。

3つ目:届出書類の適正な提出確認

社会保険料は従業員の毎月の給与や賞与額に応じて決定されるため、保険料は従業員ひとりひとり異なります。

その決定された保険料に誤りがないか、社会保険に加入した時期や従業員に支払った給与額をチェックし、給与額に見合った保険料であるかを確認します。

ここで保険料額の誤りが発覚した場合、前述のとおり未納分があるのであれば、遡っての保険料を徴収、その徴収が遅れると更に延滞金が発生します。

4つ目:賞与の支払届出の提出確認

年に3回以下の賞与を従業員に支給した場合、「賞与支払届」を、年金事務所へ届出なければなりません。

つまり、賞与も社会保険料の徴収の対象ということです。

この賞与支給に対し、適切な届出をしているか、報告した賞与額に誤りがないか、調査が入ります。

ちなみに賞与を支給しなかった場合は、「賞与不支給報告書」の提出が必要となります。

参考元:日本年金機構「賞与を支給したとき、賞与支払予定月に賞与が不支給のとき

社会保険調査時に提出すべき書類は?

調査の際に求められる提出書類は、一般的には以下のものとなり、賃金台帳やタイムカードまたは出勤簿は、過去2年間分の提出を求める場合もあります。

  • 賃金台帳
  • タイムカード、出勤簿
  • 源泉所得税の領収書
  • 就業規則、賃金規程
  • 雇用契約書、労働条件通知書
  • 労働者名簿

労務管理の状況確認が主となりますが、源泉所得税の領収書の提出も求められるケースが多々あります。

年金事務所は税務署ではありませんので、所得税の納付状況を調べることが目的としておらず、源泉所得税の領収書の提出を求める理由は、いわゆる「従業員隠し」を行なっていないかの確認を行なうためです。

源泉所得税領収証書には給与を支払った従業員の人数を記載する箇所があります。その人数と、提出した賃金台帳の人数が一致しているかを年金事務所はチェックします。

社会保険調査はどのような流れで行われる?

年金事務所の職員が会社に来社して調査を行なう、または会社が年金事務所へ来所して調査を受ける、といった「対面型」で一般的でしたが、近年ではコロナ禍の影響を受け「郵送」や「電子申請」での書類提出が主流となっています。

また、書類の準備が期日までに整わない場合は、年金事務所へ事前に相談を行なえば、提出日(来所日)の調整を行なうこともできますので、前述したとおり、「無視」「放置」は行わず、誠実な態度で調査に協力されることをおすすめいたします。

まとめ

今回の記事では、多くの企業が対象となる「社会保険の調査」について解説いたしました。
社会保険制度への加入となる対象者は、制度変更により年々範囲が広がっています。それに伴い、手続き不備が多いのか、年金事務所の調査時の指摘も細かくなっているように思われます。

社会保険調査は、不備が発覚した場合、最大2年遡って保険料が徴収され、会社の経営上インパクトの大きい出費となる可能性があります。また、従業員に対する信用低下のリスクもあるでしょう。

社会保険調査をスムーズに完了させるためには、常日頃から適切な社会保険加入手続き、パートタイマー等の労働時間および全従業員の給与額の把握が重要となります。

日々の業務に追われ、自社の社会保険手続きに課題がある企業様、社会保険調査に不安がある企業様は、社会保険制度の専門家である当社、社労士法人ステディにぜひご相談ください。

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