副業禁止は違法?就業規則で整備すべきポイント・副業規定のモデルを紹介

  1. Home
  2. /
  3. ニュース一覧
  4. /
  5. コラム
  6. /
  7. 副業禁止は違法?就業規則で整備すべきポイント・副業規定のモデルを紹介

近年、働き方改革、新型コロナウィルスの影響拡大などで、副業を積極的に解禁する企業が増えています。

企業が副業を推進することは、従業員のモチベーションアップやスキルの向上に繋がりますが、一定のルールを設けておかなければトラブルの種になることもあります。

また、副業を禁止している企業の場合も適切な文言で就業規則を整備する必要があります。

今回の記事では、副業制度と就業規則の見直しポイントについて解説しますので、今一度ルールの再設定を検討してください。

副業と就業規則の基礎知識

とはいっても、基本的な事項を押さえておかなければ、会社の制度を整備しても正しく運用ができません。副業の基本的な考えた方や、認める企業・認めない企業の相違点、就業規則との関係性を見てみましょう。

副業とは?

副業とは、主たる職業(本業)以外に行う仕事のことを指します。従業員が本業の就業時間外に、別途働き収入を得る手段です。

副業先は正社員・非正社員問わず、本業以外で仕事を行うことすべてを指しますので、フリーランスの仕事であったり、他社と雇用契約を結び働くこと、起業して経営者として働くことなど、多種多様あります。

従来、多くの企業では副業を一律禁止することが多く、推奨している企業はほとんどありませんでした。中小企業の経営者とお話する中で「副業して稼ぐくらいなら、自社で残業して働けばいい」と考えている方も一定いらっしゃいました。

しかしながら、近年は働き方改革・新型コロナウィルスによる仕事や収入の不安定感により、副業を希望する働き手が増えており、企業側も容認する傾向がでてきています。

副業を認める会社の特徴

人材の確保と離職防止につなげるために副業を取り入れることがあります。従業員の自由度やスキル習得の場を広げることで、多様な人材を引きつけ、満足度を高めることが狙いです。

また、副業は新たな視点やスキルを養い、これが本業にも反映されることでモチベーションの向上につながりますので、従業員も企業もwin-winな関係性といえるでしょう。

また、結果主義を重視する文化がある企業も多く、労働時間よりも業績を優先し、従業員の働き方に柔軟性を持たせているケースがあります。

副業を禁止する会社の特徴

一方で副業を禁止する企業は、多くの場合、情報の保護と従業員の健康管理を重視している傾向にあります。

特に、機密情報・コンプライアンスに特に厳しい業界では、副業を通じた情報漏洩のリスクを最小限に抑えるために、副業の禁止・制限をしています。

また、従業員の過重労働を防止する観点も見受けられ、これは副業が本業のパフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性や、従業員の健康問題を引き起こすリスクを避けるためでもあります。

就業規則とは?副業との関係性

就業規則は従業員の権利と義務を規定し、職場の秩序を維持するためのものです。

副業に関しては、就業規則により規制されることが一般的で、本業の業務への影響、競業避止、情報保護などを主な視点として整備をする必要があります。

副業は就業規則でどう取り扱うべき?禁止にできる?

では、就業規則を作成することで副業を禁止することはできるのでしょうか。

結論:理由もなく禁止することは難しい

過去に副業・兼業を争った裁判例では、基本的に

従業員が会社での勤務時間以外の時間(拘束されていない時間)について、どのように利用・過ごすのか基本的には従業員の自由である

とされています。

そのため、副業・兼業は容認する方向で検討することが望ましいといえるでしょう。

企業が副業を禁止できるケース

しかしながら、合理的な理由があり、一定の条件下の場合副業・兼業を制限することは可能とされています。この条件とは

  1. 労務提供上の支障がある場合
  2. 企業秘密が漏えいする場合
  3. 会社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合
  4. 競業により、企業の利益を害する場合

この4つの場合であって、これは厚生労働省「モデル就業規則」にも副業・兼業の禁止事項として明文化されています。

そのため、企業の業種・従業員の業務内容に応じて、就業規則において副業・兼業をすべて容認するのか、一部禁止にするのかしっかりと検討した上で制度化を図りましょう。

また、会社に隠れて副業している従業員がいたとしても、副業禁止の条文を明記していない場合には懲戒処分にすることができませんので、注意してください。

就業規則を整備する上で必要な2つのポイントと副業規定のモデル

通常、企業で運用している就業規則は自社で勤務することを前提としています。そのため副業を解禁する企業においては就業規則の見直し・整備は必須となります。

副業を容認・制限・禁止のどの方向感で整備するのか決める

副業・兼業を制度化するにあたって、副業・兼業を認める範囲や手続等について、企業の状況を踏まえながら、従業員と十分に話し合って決めることが望ましいです。

その際、下記4点は十分に協議・検討をしましょう。

  • どのような形態の副業・兼業を認めるか
    • 業務内容
    • 副業・兼業日
    • 副業・兼業の場所
    • 副業・兼業の期間
    • 対象者の範囲
  • 副業・兼業を行う際の手続
    • 事前松蔭や事後の届出の有無
  • 副業・兼業の状況把握するための仕組み
    • 副業・兼業時間の定期的な方向
  • 副業・兼業の内容を変更する場合の手続き
    • 期間ごとの更新制度
    • 副業・兼業先での新規顧客(反社チェック等)

これらの方向感が決まりましたら、就業規則の整備に取り掛かります。

副業を容認・制限する場合の就業規則文言例

【副業・兼業】第◯◯条

従業員は、会社に副業・兼業に関する届け出を行うことで、勤務時間外において他の会社等の業務に従事することができる。ただし会社は、当該従業員が届出業務に従事することにより次の各号のいずれかに該当すると判断した場合、これを禁止又は制限することができる。

  1. 労務提供上の支障がある場合
  2. 企業秘密が漏洩する場合
  3. 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
  4. 競業により、企業の利益を害する場合

副業の対象者をより細かく規定する場合の就業規則文言例

【副業・兼業の対象者】第◯◯条

副業・兼業は原則としてすべての従業員を対象とする。ただし、以下に該当する従業員については、副業・兼業を許可しない場合がある。

  1. 入社から6ヶ月を経過していない従業員
  2. 企業機密・コンプライアンスを管理する業務に従事し、副業を許可しない旨を予め周知されており、雇用契約を結んだ従業員
  3. その他上記に準じて、副業・兼業を許可することがふさわしくないと判断された従業員

副業規定に違反する従業員への対応・処分(懲戒)内容を決める

会社のルール違反が見受けられた場合「懲戒処分」として従業員を罰することがあります。

減給、出勤停止、悪質なコンプライアンス違反については懲戒解雇など、違反内容に応じた処分になりますが、副業を理由として懲戒処分を行う場合、その理由・根拠を就業規則に明記しなければなりません。

そのため服務規律や懲戒処分の事由も見直しておくことが大切です。

副業の解禁・禁止を検討する際に知っておくべき5つの労務管理

副業を解禁するべきか検討する際には、適切に労務管理をするために押さえるべき5つのポイントがあります。副業制度を導入することが企業にデメリットにならないよう、予め確認してください。

労働時間管理と割増賃金

副業を制度化するにあたり、企業側が一番注意すべきポイントは「労働時間管理と割増賃金」のルールです。

会社(使用者)は、自社の事業場における労働時間制度を基に、自社での労働時間と従業員から申告された副業先(他の会社)における労働時間を通算します。このとき、

  • 所定労働時間を通算する:先に雇用契約を結んでいる方から、後に契約した方を通算する
  • 所定外労働時間を通算する:実際に所定外労働が行われる順番に通算する

流れで、労働時間を確認します。そしてこの通算の結果、自社での労働時間が1日8時間・1週40時間を超えて発生する場合、割増賃金の支払いが求められます。

他の会社での労働時間が、従業員より申告等がない場合には労働時間の通算は不要ですが、適切に労務管理をするためには自己申告等がしやすい環境づくりに努めることが重要です。

通勤手当

通勤手当は、法律では支給や支給金額について定めがありませんので、会社が独自にルール化できる手当です。

副業を認める場合、従業員が自社から副業先へ移動したり、副業先から自社に出勤することも考えられます。通勤手当は「会社に届出した居住先から会社の所在地」を対象とするなど、就業規則に明記しておきましょう。

雇用保険・社会保険

雇用保険は本業と副業の両方で条件を満たす場合でも、1つの事業所でしか加入できません。一般的には賃金の多い方の会社で雇用保険に加入することになります。

社会保険(健康保険・厚生年金保険)については、勤務している事業所ごとに考える必要があり、副業先の会社においても加入条件に該当するのであれば追加で加入が必要です。

ただし健康保険証は主となる会社を従業員が選択し、その会社で発行する形になります。

労働災害・通勤災害

労働災害が発生した場合、労災保険の給付としては

  • 労働災害が発生した就業先の賃金額
  • 労働災害が発生した就業先以外の就業先の賃金額

上記を合算して計算することになりますので注意が必要です。

従業員が本業の業務を終了し、副業先へ移動している際に災害にあった場合も通勤災害に該当しますが、これは副業先の会社で対応することになります。

ケースによっては取り扱いに悩まれると思いますので、専門家に相談しましょう。

安全配慮・健康管理

会社は、従業員が副業・兼業の実施有無を問わず、健康管理をする義務があります。副業による過労の防止や、健康診断等を通じて管理を行ってください。

ただし、この場合も従業員の副業先での労働時間や業務内容およびその負荷がどの程度あるのか把握しておかなければ難しいため、従業員が副業内容を申告できる風土づくりが重要といえます。

まとめ:副業規定の整備は経営課題になっている

就業規則は従業員の権利と義務を規定しますが、副業についても明文化が必要です。

副業を許可するか否かは法律に抵触しない範囲で企業側が決定できるとはいえ、その判断には合理性が必要となりますので、副業制度は企業にとって重要な経営課題になります。

適切な管理とバランスが求められますので、副業をどのように容認し、管理していくのか、必要に応じて専門家に相談しながら検討されることをおすすめします。

当法人では、副業の制度設計だけでなく、会社のルールを踏まえた上での就業規則作成を得意としていますので、お気軽にご相談ください。

Copyright © 社会保険労務士法人ステディ
PAGE TOP