従業員が勝手に休日出勤するとどうなる?リスクから改善策を専門家が解説

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従業員が、上司の許可を得ずに勝手に休日出勤をしていませんか?

ひと昔前はそれも仕事熱心な従業員として評価されていたかもしれませんが、「働き方改革」、「生産性」が重要視されている昨今では、デメリットの多い行為です。

例えば、休日手当が余分に発生したことで人件費が増加した、といった会社の経営面での問題、そして社内のモラル低下といった組織面での問題があげられます。

人事労務をサポートしている弊社でも、「仕事が終わらないから休日でカバーしている従業員がいる」、「休みの日の方が業務に集中できるからと、勝手に休日出勤をして困っている」といったご相談を経営者の方からいただく機会がございます。

今回は、従業員が勝手に休日出勤することの問題点やデメリット、そして今後の改善策について解説いたします。

休日に勝手に出勤する従業員がいることの問題点とは?

そもそも休日出勤は法や規則に抵触する行為なのでしょうか。違反性の有無は労働基準法上、そして就業規則上で見解が異なります。

労働基準法上での違反性

休日出勤の行為そのものが法令違反となることはありません。しかし、その休日出勤の要因が会社からの指揮命令下によるものとされる場合は、「会社の指示による休日出勤」と判断され、さらに以下の項目に該当する場合は、会社が法令違反を行なったとされます。

  • 労働基準法で定められた休日の回数分、従業員に休日をとらせておらず、かつその労働時間に対し、休日手当を支払っていない
  • 36協定で休日出勤について定めていない、または定めていたとしてもその範囲を超えて業務をさせていた

上記で述べた「会社の指示による休日出勤」に該当するケースとは、以下3つがあげられます。

  1. 業務時間内に終了させることが困難な仕事量である
  2. 上長承認を得ない休日出勤が常態化している
  3. 会社、上司がそれを黙認している

つまり、「部下が勝手に休日出勤しているだけなので、会社は関係ない」ではすまされないということです。

就業規則上での違反性

就業規則で休日出勤を上司の事前許可制、または命令でのみ認めるといったルールを徹底している場合、無断で休日出勤を行なった従業員の行為は就業規則違反に該当します。

あわせて、就業規則違反を行なった者を懲戒処分とする旨も定めていれば、会社はその従業員に対して懲戒処分を行うことも可能です。

ただし、懲戒処分は慎重に行うべきであり、まずは適切に指導・教育を行なう等、段階的な手順を踏む必要があることを念頭においてください。

もちろん、休日出勤について就業規則に定めていない場合であっても、従業員の勝手な休日出勤に対し、注意喚起・指示を行なうことは可能です。ですが、違反性を問うこと、処分を下すことは難しくなってきます。

勝手に休日出勤されると会社にもデメリットがあるのか?

それでは、勝手に休日出勤を行なう従業員がいることで発生するデメリットとは何でしょうか。以下2つのリスクがあげられます。

  • 経済的なリスク
  • 組織的なリスク

それぞれ具体的に解説いたします。

経済的なリスク

経済的なリスクとして、会社・経営者が想定していない不要なコストが発生する恐れがあります。

割増賃金の発生

従業員が勝手に休日出勤をしたとしても、業務命令によるものと判断される場合は、従業員に対し、休日手当等(割増賃金)を支払わなければなりません。

割増率は、通常の賃金の1.35倍以上、場合によっては1.25倍以上としなければならず、状況によっては(深夜労働も行っている等)さらに割増率が高くなり、会社の人件費の増加に直結します。

未払い休日手当・残業代の発生

次は、従業員の勝手な休日出勤を会社が管理しきれていない状況下で起こりえるリスクです。

勝手な休日出勤とはいえ、会社や上司がそれを管理しきれていないとなると、その休日出勤が「会社の指示ではない」と判断を下すこともできません。

例えば、当該従業員と面談等を行なった結果

「日頃から業務量が多いから休日に対応した」

「取引先から休日に商談を求められていた」

等といった理由で休日出勤をしていたことが明らかになった場合、それは「会社の指示による出勤」として扱われる可能性は高くなります。

そして、それがしばらく後になってから判明した場合、会社は従業員に対し、未払いの休日手当または残業代を支払わなければなりません。

未払い賃金の発生は、突発な人件費の出費というデメリットだけでなく、法的なリスクもあるイメージの悪い事象です。また、従業員の会社に対する信頼低下・モチベーション低下にも繋ながり、次の項目にある「組織面でのリスク」にも影響を及ぼします。

また、休日出勤が多発することで給与計算が煩雑になり、それがミスを招き、未払い賃金を発生させてしまう、というリスクも考えられます。

組織的なリスク

組織的なリスクとは「会社の風土」「働く環境の雰囲気」などに関わってくるケースが考えられます。

従業員のワークライフバランスの乱れ

休日出勤は、ワークライフバランスを乱す大きな要因の一つともいえます。

疲労の蓄積によるストレス増加や健康障害を引き起こす可能性がある他、従業員のモチベーション低下、生産性の低下にも繋がります。

従業員の労働時間を管理した上で適切な休暇を取得させるといった、健康管理面としての安全配慮義務を会社が怠っている、と従業員や社会からとらえられてもおかしくはないでしょう。

従業員のモラル低下および人間関係の脆弱化

勝手な休日出勤は、他の社員にも影響を及ぼします。

例えば、休日出勤を行なった者が代休を申請し、会社が稼働している曜日に休日を取得した場合、他の従業員は「不平等だ」と感じるでしょう。

加えて、その代休に対し、上司が「事実確認を適切に行っていない」「独断で許可している」とった状況下であれば、他の従業員も休日出勤や代休を申請し始める可能性は高くなります。

こういった利己的な従業員の態度は、社内のモラル低下、人間関係の脆弱化を招き、業務遂行に支障をきたす要因となりかねません。

休日に勝手に出勤する従業員に休日出勤の手当は必要?

従業員の休日出勤が発覚、または従業員から休日出勤の手当を請求された場合、例え勝手な休日出勤とはいえ、手当を支払う必要はあるのでしょうか。

ケースバイケースで対応は異なりますので、それぞれ確認していきましょう。

休日手当が必要なケース

当該休日出勤が、以下2つの事象に当てはまる場合は、休日手当の支給が必要となります。

  1. 「会社の指示による休日出勤」に該当する
  2. 当該従業員が休日出勤を繰り返し、休日取得の回数が法定休日(※)以下となってしまった

1つ目は、先の項目、「労働基準法上での違反性」で述べたとおりです。

2つ目は、休日出勤したことにより、労働基準法で定めている「法定休日」以下の休日取得となってしまったケースを想定しています。

上記2つの要件を満たすと、休日手当の支給が必要となります。

なお法定休日とは「毎週少なくとも1日の休日」もしくは「4週間の間に4日以上の休日」を従業員に必ず与えなければならない休日のことです。

では具体的に、休日手当がいくらになるのか、例をあげて算出してみましょう。

【休日手当の計算例

基本給:30万円・休日出勤:2回(2日分)

1日の所定労働時間:8時間

1年間における1か月平均所定労働時間:162時間

①まず、1時間あたりの賃金を算出します。
30万円÷162時間=1,852円
(端数が出た場合、50銭未満は切捨て、50銭以上1円未満は切上げます)

②次に、1時間あたりの賃金に、休日出勤に対する割増率1.35倍を乗じた時間給を算出します
1,852円×1.35=2,500円

③最後に、休日出勤を行なった時間数に②で算出した時間給を乗じます
16時間(1日の所定労働時間8時間×2日分)×2,500円=4万円

本件の休日手当の額…4万円

従業員が基本給以外にも役職手当等、一律で支給されている賃金がある場合は、その手当も割増賃金の計算の基礎に含めて算出しなければならず、更に多くの休日手当を支給しなければなりません。

休日手当が不要なケース

では、休日出勤をしても休日手当の支給が不要となるケースはどういったものでしょうか。以下、2つがあげられます。

  1. 当該休日出勤日が「法定休日」以外の休日(「法定外休日」といいます)であった
  2. 「会社の指示による休日出勤」に該当しない

当該休日出勤日が「法定休日」以外の休日であった

先に述べた休日手当が必要になるケースに付随する内容ですが、当該休日出勤日以外に週に1回の休日を取得済である、または4週間の間に4日以上の休日を取得済なのであれば、休日手当の支給は不要となります。

しかし、休日手当には至らなくても、その休日出勤を行なったことにより、その労働時間が週の法定労働時間を超えてしまった場合は、その超えた時間分の「残業代(時間外労働の割増賃金)」の支給は必要となります。

「会社の指示による休日出勤」に該当しない

就業規則で休日出勤は上司の事前承認制であるといったルールを明確にし、運用を徹底していれば、従業員の勝手な休日出勤を「会社の指示による休日出勤としない」と判断することも可能です。その場合、休日手当はもとより、当該休日出勤を「労働時間」としてカウントする必要もありません。

しかし、上記判断を下す場合は、休日出勤の運用のルールを徹底していることが必須となります。就業規則には記載があるものの、休日出勤をしていた従業員が他にもいる、上司が黙認していた、といったケースがある場合は、従業員の勝手な休日出勤も「会社の指示による休日出勤」と判断される可能性は高くなるでしょう。

勝手な休日出勤の対処法について

ここからは、勝手な休日出勤を今後、従業員にさせないための具体的な対処法を説明します。

就業規則による休日出勤の扱いを明文化、運用の徹底化

従業員の勝手な休日出勤を阻止するためには、就業規則に休日出勤に関する運用を明確に定め、それを従業員に周知することが効果的です。

例えば、休日出勤を上司の事前承認制とする、事前承認のない休日出勤は禁止とするといった文言を追加することがあげられます。

また、勝手な休日出勤を行なった場合の懲戒処分も定めれば、規則を何度も破る悪質な従業員に対し、一定の制裁を下すことも可能となります。

従業員との適切なコミュニケーション、指導・指示

そもそも何故、休日出勤をするのか、当該従業員からその理由を聞き出すことも重要です。例えば以下のような理由があがってくるかもしれません。

  1. 多くの業務を任されていて、所定の労働時間だけでは終わらない
  2. 上司や人事から良い評価を得たい
  3. 休日を過ごす環境にストレスを感じている

1つ目であれば業務量の見直し、人員の再配置が必要となる可能性があります。
2つ目はどういった行為が評価に繋がるのか、正しい人事評価基準を説明する必要があるでしょう。
3つ目は、従業員に対してメンタルヘルス対策を講じなければならない、健康管理の確保措置を求められるかもしれません。

こういった形で、従業員とのコミュニケーションは、様々な解決策のヒントを見つけ出すことができます。

また、勝手な休日出勤に関して、適切な指導・指示を行なうことも重要です。
会社として問題視している事案に対し「適切に対処している」、「問題行動を放置したままにしない」という態度が、休日出勤の問題のみならず、その他の労働問題を解決していくために必要不可欠であると考えます。

まとめ

今回は、上司の許可を得ずに従業員が勝手に休日出勤をすることの問題点、休日手当の必要性の有無、そして休日出勤をなくすための改善策を紹介しました。

このような問題を防ぐためには、就業規則の整備を行ない、明確なルール作りを行うことが大切です。また、定期的な従業員とのコミュニケーションも重要となってくるでしょう。

当社では就業規則の作成や変更のお手伝いだけでなく、労働問題に関してのご相談も承っております。トラブルがより大きくなる前に是非、当社へご連絡ください。

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