コラム

2015.04.15
「オープンブックマネジメント」の効用と注意点

労働環境を向上させるためには、そもそも事業の生産性と収益性を高めなければならない。
たとえば、企業の経営者から下記のような声をよく聞く。

  • 「従業員を増やすことができれば、シフト制等を採用することにより長時間労働を避けることができる」
  • 「ただ人件費を増やすだけだと利益を圧迫するから、生産性を高めなければならない」
  • 「生産性が高まることにより収益性を高めることができれば、社会保険に加入するのは当然。福利厚生を充実させることもできる」
  • 「収益性が高ければ採用に費用をかけることができ、優秀な人材を採用できる」

このように、そもそも「どうやって生産性・収益性を高めるか」が労務問題の解決のカギになっていることも多い。

経営の透明性を高める「オープンブックマネジメント」

今回取り上げる「オープンブックマネジメント」とは、自社の色々な経営指標を従業員に開示し、経営の透明性を高めることによって、従業員の自律性や組織のモラルを高くしようとする手法をいう。つまり、簿記・会計を開示して、全員参加型で経営をしていくマネジメント手法のことをいう。財務情報を従業員に公開するためには、次のポイントに気を付けなければならない。

従業員の成熟度や知識レベル、会社との関係性に応じた公開する情報の選択

企業の状況によってはオープンブックがふさわしくない場合がある。
オープンブックよりも前に、財務知識の基礎的なリテラシーを研修しなくてはならないことも十分にありうる。会計に関しては苦手な方にとっては目を背けたくなる分野でもあるので基本的なことを身近な例に置き換えて教育することも考えなくてはならないだろう。
社員との関係性が良くない企業であればオープンブックがマイナスメッセージとして伝わる危険性もある。

部門別、階層別に公開する情報のレベル分け

他部門の財務情報を見せると、かえって自部門のことに集中できないという現象が起きることがある。また、職位の高さに応じてアクセスできる財務情報に差をつけることで混乱を防ぐことを要する場合もある。
注意深く公開情報を整理・統合する必要がある。

人事評価制度・給与制度とオープンブックの関連付け

オープンブックにより経営指標を公開することで、人事評価や給与制度に結び付けることができる。
粗利高の最大化が最重要課題であれば、一定の粗利高を超えると、利益に連動した報酬(インセンティブ)が支払われるようにするという仕組みが考えられる。
例えば、あるホテルグループでは部屋の稼働率が一定水準を超えているとボーナスを支給している。
また、ある歯科医院では、患者数が一定水準を超えると当日にボーナスを支給する仕組みにしてから、スタッフが予約の組み入れに工夫をするようになった例もある。
このように、オープンにすることで従業員に対して納得度の高い人事制度・給与制度と関連させることができる。

経営をオープンにするのは、心理的な抵抗感があるかもしれない。しかし、いったんオープンにしてしまうと会社の風通しがよくなり、透明性が確保されることで今までになかった安堵感を感じ、従業員にとっても心地よい職場環境を作り出すことができる。
従業員のモチベーション向上ためにも、オープンブックマネジメントを取り入れるのはどうだろうか。