学生アルバイトを採用する際、「学生なら雇用保険や社会保険に加入させなくてもよい」と考えている労務担当者や経営者の方もおられるのではないでしょうか。
実際には、昼間学生かどうか、週の所定労働時間、雇用期間、正社員との労働時間・労働日数の比較などによって、加入の要否が変わります。
特に注意したいのは、雇用保険と社会保険では学生の扱いが異なる点です。
判断基準を混同すると、本来必要な資格取得手続きを行わず、後から加入漏れが判明する可能性があります。
本記事では、学生アルバイトの雇用保険・社会保険の加入条件を整理し、昼間学生や休学中の学生、夜間・通信制の学生などのケース別に解説します。採用時の確認項目や加入手続き、シフト変更時の対応も紹介するため、経営者や人事労務担当者が実務で判断する際にお役立てください。
学生アルバイトも雇用保険・社会保険に加入する場合がある
学生アルバイトを採用する際は、「学生であれば保険に加入させる必要はない」と一律に判断してはいけません。雇用保険と社会保険では学生の取り扱いが異なり、学校の課程や勤務条件によっては加入対象となります。
加入漏れを防ぐためには、学生であるかどうかだけでなく、週の所定労働時間、月の所定労働日数、雇用期間、勤務先の適用状況などを個別に確認することが重要です。
学生という理由だけで一律に加入不要とは判断できない
学生アルバイトの保険加入を判断するときは、まず雇用契約書や労働条件通知書に記載した勤務条件を確認します。実際のシフトだけを見て判断するのではなく、契約上の所定労働時間や所定労働日数を基準に確認するのが基本です。
たとえば、昼間の学校に通う学生は、雇用保険では原則として適用除外となります。ただし、休学中の学生や卒業後も同じ会社で勤務することが決まっている学生など、一定のケースでは加入対象になる可能性があります。
社会保険についても、短時間労働者の加入要件では学生が原則として対象から除かれます。しかし、正社員など通常の労働者と比べて、週の所定労働時間と月の所定労働日数がいずれも4分の3以上であれば、学生でも健康保険・厚生年金保険への加入が必要です。
雇用保険と社会保険では学生の扱いが異なる
雇用保険と社会保険は、どちらも従業員の加入手続きを会社が行う制度ですが、加入条件は同じではありません。両者を「週20時間以上なら加入」「学生なら対象外」といった単純な基準でまとめて判断すると、誤った処理につながります。
| 確認項目 | 雇用保険 | 社会保険 |
|---|---|---|
| 主な制度 | 失業等給付、育児休業給付など | 健康保険、厚生年金保険 |
| 学生の原則的な扱い | 昼間学生は原則として適用除外 | 短時間労働者の要件では学生を原則除外 |
| 学生でも加入する主なケース | 休学中、夜間・定時制・通信制、卒業後も継続勤務する場合など | 通常労働者の4分の3以上働く場合、休学中、夜間・定時制・通信制など |
| 判断時の主な確認事項 | 学生区分、週の所定労働時間、雇用見込み | 労働時間、労働日数、学生区分、事業所の適用状況 |
同じ学生アルバイトでも、雇用保険には加入せず、社会保険には加入するケースがあります。反対に、勤務時間や学生区分によっては、両方の加入対象となる場合もあります。
まず確認したい加入判断の全体像
学生アルバイトを採用したら、雇用保険と社会保険を分けて順番に確認します。採用時だけでなく、休学、卒業、復学、契約更新などによって状況が変わったときにも再判定が必要です。
雇用保険は学生区分と週の所定労働時間を確認する
雇用保険では、最初に昼間学生に該当するかを確認します。そのうえで、週の所定労働時間や雇用される見込みの期間を確認し、適用対象となるかを判断します。
社会保険は4分の3基準から先に確認する
社会保険では、まず正社員など通常の労働者と比較し、週の所定労働時間と月の所定労働日数がそれぞれ4分の3以上かを確認します。この基準を満たす場合は、学生であることを理由に加入対象から外すことはできません。
4分の3基準を満たさない場合は、短時間労働者の加入要件に沿って、労働時間や学生区分などを確認します。この順番を社内のチェック手順として統一しておくと、担当者による判断のばらつきや加入漏れを防ぎやすくなります。
学生アルバイトが雇用保険に加入する条件
学生アルバイトの雇用保険を判断する際は、一般的な加入要件を確認したうえで、昼間学生に該当するかを見極めます。週20時間以上働いているからといって、すべての学生が加入対象になるわけではありません。
学校の課程や在学状況によって扱いが変わるため、採用時には学生証だけでなく、必要に応じて在学証明書や休学証明書なども確認することが大切です。
雇用保険の基本的な加入要件
パート・アルバイトという名称にかかわらず、原則として次の2つを満たす労働者は雇用保険の加入対象です。本人が加入を希望していない場合でも、要件を満たせば会社は資格取得手続きを行わなければなりません。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上である
- 31日以上引き続き雇用される見込みがある
週の所定労働時間は、実際に働いた時間ではなく、雇用契約書や労働条件通知書などで通常勤務することになっている時間を基準にします。週によって所定労働時間が変わる契約では、一定期間の平均時間から判断する場合があります。
31日未満の契約であっても、契約書に更新する旨が記載されている場合や、同様の契約で更新された実績がある場合は、31日以上の雇用見込みがあると判断されることがあります。
昼間学生は原則として雇用保険の対象外
大学、高等学校、専修学校などに昼間通学している学生や生徒は、原則として雇用保険の被保険者になりません。週の所定労働時間が20時間以上あり、長期間勤務する予定であっても、昼間学生に該当すれば基本的には適用除外です。
そのため、雇用保険の加入要件を確認するときは、労働時間だけで判断せず、どの学校のどの課程に在学しているかを確認する必要があります。
昼間学生でも雇用保険に加入するケース
昼間学生であっても、一定の事情がある場合は雇用保険の加入対象になります。主なケースは次のとおりです。
- 卒業見込証明書があり、卒業前から勤務して卒業後も同じ事業所で働く予定がある
- 休学中であり、その事実を証明する書類を提出できる
- 会社の命令や承認を受けて学校に通っている
卒業後も継続勤務する予定というだけで自動的に対象になるとは限りません。卒業見込みや勤務実態を確認し、一般の労働者と同様に働ける状態かを含めて判断します。
夜間・定時制・通信制の学生は加入対象になり得る
大学の夜間学部、高等学校の夜間・定時制課程、通信教育を受けている学生などは、昼間学生による適用除外の対象とはされません。そのため、週20時間以上かつ31日以上の雇用見込みという基本要件を満たせば、雇用保険への加入が必要です。
「学生」という申告だけで処理せず、昼間、夜間、定時制、通信制のどれに該当するかまで確認しましょう。
留学生アルバイトを雇う場合の注意点
外国人留学生についても、雇用保険の判断では昼間学生に該当するかを確認します。
昼間の教育機関に在学している留学生は原則として適用除外ですが、夜間・定時制などで基本要件を満たす場合は加入対象になり得ます。
ただし、雇用保険とは別に、在留資格や資格外活動許可の確認も必要です。在留資格が「留学」の場合、原則として資格外活動許可を受け、複数の勤務先を含めて週28時間以内などの範囲で働かなければなりません。採用時には在留カードの表面だけでなく、裏面の資格外活動許可欄まで確認してください。
学生アルバイトが社会保険に加入する条件
学生アルバイトの社会保険加入を判断するときは、最初に「通常の労働者の4分の3以上働いているか」を確認しましょう。4分の3基準を満たさない場合に限り、短時間労働者としての加入要件を確認するのが基本的な順序です。
ここでいう社会保険とは、健康保険と厚生年金保険を指します。雇用保険とは加入条件が異なるため、別々に判定しなければなりません。
最初に通常労働者の4分の3基準を確認する
同じ事業所で働く通常の労働者と比較し、次の2つをいずれも満たす学生アルバイトは、原則として社会保険の加入対象です。
- 1週間の所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上
- 1か月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3以上
たとえば、正社員の所定労働時間が週40時間、所定労働日数が月20日の事業所では、週30時間以上かつ月15日以上が一つの目安になります。ただし、実際の判定には自社の就業規則や雇用契約上の所定労働時間・所定労働日数を使用します。
4分の3基準を満たす学生は社会保険に加入する
4分の3基準による加入では、学生であることを理由に対象から除外する規定はありません。
昼間の大学や高校に通っている学生でも、勤務条件が4分の3基準を満たせば、健康保険と厚生年金保険への加入が必要です。
この点は、雇用保険において昼間学生が原則として適用除外になる扱いとは異なります。「昼間学生だから社会保険にも加入しない」と判断しないよう注意しましょう。
また、4分の3基準は、短時間労働者に対する社会保険の適用拡大とは別の基準です。会社の従業員数が51人未満であっても、事業所が社会保険の適用事業所であり、学生が4分の3基準を満たせば加入対象になります。
4分の3未満の場合は短時間労働者の加入要件を確認する
4分の3基準を満たさない場合は、短時間労働者として加入対象になるかを確認します。2026年7月時点では、主に次の要件をすべて満たす必要があります。
- 週の所定労働時間が20時間以上である
- 所定内賃金が月額8万8,000円以上である
- 2か月を超えて雇用される見込みがある
- 学生ではない
- 原則として厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業などで働いている
従業員数が基準に満たない企業でも、労使合意に基づく申し出により任意特定適用事業所となっている場合は、短時間労働者が加入対象になることがあります。
雇用保険と社会保険の加入条件をケース別に確認
学生アルバイトの加入要否は、週の労働時間だけでは判断できません。同じ週20時間以上の勤務でも、昼間学生か夜間・通信制の学生か、正社員の4分の3以上働いているかによって結論が異なります。
ここでは、採用時やシフト変更時に起こりやすいケースをもとに、雇用保険と社会保険の基本的な考え方を確認します。
| ケース | 雇用保険 | 社会保険 |
|---|---|---|
| 昼間の大学生が週15時間働く | 原則として加入対象外 | 原則として加入対象外 |
| 昼間の大学生が週25時間働く | 昼間学生のため原則として対象外 | 4分の3基準を満たさなければ原則として対象外 |
| 昼間の大学生が正社員の4分の3以上働く | 原則として対象外 | 加入対象 |
| 夜間・定時制・通信制の学生が週20時間以上働く | 基本要件を満たせば加入対象 | 短時間労働者の要件を満たせば加入対象 |
| 休学中の学生がフルタイムに近い形で働く | 基本要件を満たせば加入対象 | 4分の3基準などを満たせば加入対象 |
| 卒業前から勤務し、卒業後も継続雇用する | 例外として加入対象になる場合がある | 勤務条件に応じて加入対象 |
| 長期休暇中だけ一時的に勤務時間が増える | 契約上の所定労働時間をもとに判断 | 契約条件や勤務の継続性をもとに判断 |
昼間の大学生が週15時間働く場合
昼間学生は雇用保険の適用除外であり、週15時間では一般的な週20時間以上という要件も満たしません。
社会保険についても、通常の労働者の4分の3未満であり、短時間労働者の週20時間以上という要件にも届かないため、原則として加入対象外です。
昼間の大学生が週25時間働く場合
週20時間以上働いていても、昼間学生であれば雇用保険には原則として加入しません。社会保険では、まず4分の3基準を確認します。
4分の3基準を満たさない場合、昼間学生は短時間労働者の適用対象から原則として除かれるため、週25時間という理由だけでは加入対象になりません。
昼間の大学生が正社員の4分の3以上働く場合
昼間学生であっても、週の所定労働時間と月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3以上であれば、社会保険への加入が必要です。
一方、雇用保険では昼間学生の適用除外があるため、休学中などの例外に該当しない限り、原則として加入対象になりません。同じ学生に対して、社会保険だけ加入するケースがある点に注意が必要です。
夜間・通信制の学生や休学中の学生が働く場合
夜間・定時制・通信制の学生や休学中の学生は、昼間学生と同じ扱いにはなりません。
雇用保険では、週の所定労働時間や雇用見込みの要件を満たせば加入対象です。
社会保険についても、4分の3基準または短時間労働者の加入要件を満たせば加入が必要になります。
長期休暇中だけ勤務時間が増える場合
夏休みや春休みだけ一時的に実労働時間が増えても、直ちに加入対象になるとは限りません。原則として、雇用契約上の所定労働時間や所定労働日数をもとに判断します。
ただし、契約を変更して勤務時間を増やした場合や、契約を超える勤務が恒常化している場合は、加入要件をあらためて確認しなければなりません。学生区分と契約条件の両方を確認し、雇用保険と社会保険を別々に判定することが重要です。
学生アルバイトを雇用するときの加入判断手順
学生アルバイトの保険加入は、採用担当者の経験や本人の申告だけに頼らず、決められた順番で確認することが重要です。
雇用保険と社会保険では判断基準が異なるため、社内で共通のチェックシートを用意しておくと加入漏れを防ぎやすくなります。
手順1|在学状況と学校の課程を確認する
最初に、学生証や在学証明書などで在学状況を確認しましょう。
学校名だけでなく、昼間、夜間、定時制、通信制のどの課程に在籍しているか、休学中ではないかまで確認してください。
昼間学生は雇用保険や短時間労働者の社会保険で原則として適用対象外となりますが、夜間・定時制・通信制の学生や休学中の学生などは加入対象になる場合があります。卒業前から勤務し、卒業後も同じ事業所で働く予定がある場合は、卒業見込証明書や継続雇用の予定も確認しましょう。
手順2|所定労働時間と所定労働日数を確認する
次に、雇用契約書や労働条件通知書に記載した週の所定労働時間と月の所定労働日数を確認します。
加入判断では、繁忙期に一時的に増えた実労働時間ではなく、就業規則や雇用契約書などで定めた所定労働時間を用いるのが基本です。
契約内容と実際のシフトが大きく異なり、その状態が継続している場合は、勤務実態を踏まえて契約条件を見直す必要があります。
手順3|契約期間と更新予定を確認する
雇用保険では31日以上、社会保険では2か月を超えて雇用される見込みがあるかを確認します。
契約期間が短く設定されていても、更新条項や過去の更新実績などから継続雇用が見込まれる場合は、加入対象になる可能性があります。
手順4|社会保険の4分の3基準を確認する
社会保険は、短時間労働者の要件より先に4分の3基準を確認します。
学生アルバイトの週の所定労働時間と月の所定労働日数が、通常の労働者のいずれも4分の3以上であれば、昼間学生でも社会保険の加入対象です。
4分の3未満の場合は、週20時間以上、学生ではないこと、事業所の規模など、短時間労働者の要件を確認します。
手順5|雇用保険と社会保険を別々に判定する
確認した情報をもとに、雇用保険と社会保険を個別に判定します。「雇用保険が対象外だから社会保険も対象外」とは限りません。
たとえば、昼間学生が通常の労働者の4分の3以上働く場合、雇用保険は原則として対象外でも、社会保険は加入対象になります。判定結果と根拠となる書類を採用記録とともに保管しておきましょう。
手順6|加入対象なら資格取得手続きを行う
加入対象と判断した場合は、雇用保険被保険者資格取得届や、健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届を提出します。雇用保険の資格取得届は、原則として被保険者となった日の属する月の翌月10日までに、管轄のハローワークへ提出します。
採用時だけでなく、休学、復学、卒業、契約更新、所定労働時間の変更があったときにも加入状況を再確認する運用が必要です。
学生アルバイトの保険加入手続きと必要書類
学生アルバイトが加入要件を満たした場合は、本人の希望にかかわらず、会社が雇用保険や社会保険の資格取得手続きを行います。手続きの遅れを防ぐため、採用時点で在学状況や勤務条件、個人番号などを確認しておきましょう。
雇用保険の資格取得手続き
雇用保険の加入対象となる学生アルバイトを雇い入れた場合は、「雇用保険被保険者資格取得届」を管轄のハローワークへ提出します。提出期限は、被保険者となった日の属する月の翌月10日までです。
たとえば、4月1日に加入要件を満たして雇用した場合は、原則として5月10日までに手続きを行います。試用期間や研修期間であっても、雇用関係があり加入要件を満たす場合は、その期間を除外して考えることはできません。
資格取得届の提出時には、次のような書類を確認できる状態にしておくとスムーズです。
- 雇用契約書または労働条件通知書
- 労働者名簿
- 出勤簿やタイムカード
- 賃金台帳
- 過去に加入歴がある場合の雇用保険被保険者番号
通常の届出では添付書類が不要とされる場合もありますが、提出期限を過ぎた場合や、雇用開始日・労働時間などの確認が必要な場合は、ハローワークから関係書類の提出を求められることがあります。
社会保険の資格取得手続き
健康保険・厚生年金保険への加入対象となる場合は、「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」を提出します。提出期限は、加入要件を満たした日から5日以内です。
提出先は、日本年金機構の事務センターまたは管轄の年金事務所です。電子申請による手続きも利用できます。健康保険組合に加入している会社では、健康保険組合側の手続きも確認してください。
資格取得届には、基礎年金番号または個人番号を記載します。学生が基礎年金番号を把握していない場合でも、本人確認を行ったうえで個人番号による手続きが可能です。
採用時に確認しておきたい書類
学生アルバイトについては、保険手続きに必要な情報に加えて、学生区分の判断根拠を残しておくことが重要です。
学生証や在学証明書で学校名と在学期間を確認し、夜間・定時制・通信制の場合は課程も把握します。休学中の学生には休学証明書、卒業後も継続雇用する学生には卒業見込証明書などを提出してもらうと、加入判断の根拠が明確になります。
学生本人が加入を希望しなくても手続きは必要
「親の扶養から外れたくない」「保険料を負担したくない」と本人から申し出があっても、法令上の加入要件を満たす場合は加入手続きを省略できません。
会社は本人の希望ではなく、雇用契約や勤務実態をもとに判断する必要があります。加入による給与への影響を事前に説明し、本人の理解を得たうえで期限内に手続きを進めましょう。
学生アルバイトのシフト変更で加入条件を満たした場合の対応
学生アルバイトの加入判定は、採用時に一度行えば終わりではありません。授業日程や長期休暇、卒業、休学などに伴って勤務条件が変わった場合は、雇用保険と社会保険の加入要否をあらためて確認する必要があります。
特に、契約上は短時間勤務でも、実際には加入基準を超える働き方が続いているケースには注意が必要です。
契約上の所定労働時間が増えた場合
雇用契約を変更し、週の所定労働時間が20時間以上になった場合は、その変更日から雇用保険の加入要件を確認します。昼間学生の適用除外に該当せず、31日以上の雇用見込みがあれば、資格取得手続きが必要です。
社会保険についても、契約変更後の所定労働時間と所定労働日数をもとに判定します。4分の3基準を満たした場合は、昼間学生であっても加入対象です。
実労働時間が一時的に増えただけの場合
繁忙期や欠員対応により、一時的に勤務時間が増えただけであれば、直ちに加入対象になるとは限りません。原則として、雇用契約書や労働条件通知書などに記載された所定労働時間を基準に判断します。
ただし、「一時的な増加」として扱うためには、勤務時間が元に戻る時期や理由が明確であることが重要です。長期間にわたり基準を超えて働かせている場合は、契約内容と勤務実態が一致しているかを見直しましょう。
契約時間を超える勤務が恒常化している場合
短時間労働者の社会保険では、所定労働時間が週20時間未満であっても、実労働時間が2か月連続で週20時間以上となり、その後も同じ状態が続くと見込まれる場合、3か月目の初日から加入対象になることがあります。
たとえば、週18時間の契約で採用した学生が毎週25時間程度働き、その状態が今後も継続する予定であれば、契約書の時間だけを見て対象外と判断するのは適切ではありません。
長期休暇中だけ勤務時間を増やす場合
夏休みや春休みの期間だけ勤務時間を増やし、授業再開後に元の勤務時間へ戻ることが明確であれば、一時的な勤務増加として扱われる可能性があります。
一方で、長期休暇をきっかけに雇用契約を変更し、その後も週20時間以上の勤務を続ける場合は、変更時点から加入要件を再確認しなければなりません。
卒業・休学・復学時には加入状況を見直す
昼間学生が休学した場合は、雇用保険や短時間労働者の社会保険における学生除外の扱いが変わる可能性があります。卒業後も継続勤務するときも、卒業日や勤務条件に応じて加入手続きが必要です。
反対に、復学して昼間学生になった場合や、契約時間が短くなった場合は、資格喪失の要否を確認します。学生本人からの申告を待つだけでなく、学期や契約更新のタイミングで在学状況と勤務条件を定期的に確認する仕組みを整えましょう。
扶養内で働きたい学生への説明で注意すること
学生アルバイト本人や保護者から、「扶養を外れない範囲で働きたい」と相談されることがあります。この場合、会社が判断する社会保険の加入義務と、親の健康保険における扶養認定、税法上の扶養を分けて説明することが重要です。
単に年収だけを確認して勤務時間を調整すると、本来必要な社会保険の加入手続きを見落とすおそれがあります。
社会保険の加入条件と親の扶養条件は別に考える
学生アルバイトが自社の社会保険加入要件を満たした場合は、親の扶養に入りたいという希望があっても、健康保険・厚生年金保険への加入が必要です。社会保険の加入義務は、本人や保護者の希望によって選択できるものではありません。
一方、勤務先の社会保険に加入しない学生が親の健康保険の被扶養者になれるかは、収入や生計維持関係などをもとに、親が加入する健康保険の保険者が判断します。
2025年10月1日以降、扶養認定を受ける人が19歳以上23歳未満であり、配偶者ではない場合、年間収入要件は原則として150万円未満です。それ以外の一般的な被扶養者は、原則として年間収入130万円未満が目安となります。ただし、収入要件以外の認定条件もあるため、年収だけで扶養に入れると断定することはできません。
社会保険上の扶養と税法上の扶養は異なる
健康保険の被扶養者認定と、所得税の扶養控除は別の制度です。健康保険の扶養から外れても、親が税法上の控除を受けられる場合があり、反対に税法上の控除対象であっても、勤務先の社会保険に加入するケースがあります。
税法では、19歳以上23歳未満の親族について、給与収入が123万円を超えても188万円以下であれば、親族の所得に応じて特定親族特別控除を受けられる仕組みがあります。給与収入が150万円以下であれば、一定の要件のもとで最大63万円の控除が適用されます。
学生本人や保護者から質問されたときの伝え方
会社からは、まず「当社の勤務条件では社会保険の加入対象になるか」を説明しましょう。
そのうえで、親の健康保険の扶養認定については親の勤務先や加入する健康保険へ、税金については税務署や税理士などへ確認するよう案内するとよいでしょう。
説明時には、週の所定労働時間、月の所定労働日数、契約期間、見込賃金など、会社が把握している客観的な情報を提示します。本人が扶養内勤務を希望する場合も、勤務条件を変更できるかは業務状況を踏まえて協議し、合意内容を書面に残しておくことが大切です。
会社が「扶養に入れる」と断定しない
親の健康保険の扶養認定は、会社ではなく、協会けんぽや健康保険組合などの保険者が行います。したがって、採用担当者が「この年収なら必ず扶養に入れます」と保証する説明は避けましょう。
「自社での社会保険加入要否」と「親の扶養に継続して入れるか」を明確に分けて案内することで、学生本人や保護者との認識違いを防ぎやすくなります。
学生アルバイトの雇用保険・社会保険で企業が注意すべきこと
学生アルバイトの加入漏れは、学生本人の申告だけで判断した場合や、雇用保険と社会保険の基準を混同した場合に起こりやすくなります。採用時に加入対象外だったとしても、休学や卒業、契約変更によって途中から加入が必要になることもあります。
企業は判定基準を社内で統一し、確認した情報と判断根拠を記録しておくことが重要です。
「学生証を持っているから対象外」と判断しない
学生証を持っていることだけでは、雇用保険や社会保険の加入要否を判断できません。昼間、夜間、定時制、通信制のどの課程に在学しているか、休学中ではないかまで確認する必要があります。
昼間学生であっても、卒業前から就職し、卒業後も同じ事業所で継続して働く場合などは、雇用保険の被保険者となることがあります。
雇用保険と社会保険を同じ基準で判定しない
雇用保険と社会保険では、学生の扱いも加入条件も異なります。たとえば、昼間学生は雇用保険では原則として適用除外ですが、社会保険の4分の3基準を満たす場合は加入対象です。
「雇用保険に入らないため、社会保険にも入らない」といった連動した判断は避け、それぞれのチェック欄を設けて個別に判定しましょう。
4分の3基準を確認せず学生除外を適用しない
社会保険では、短時間労働者の学生除外を確認する前に、通常の労働者の4分の3以上働いているかを判定します。4分の3基準に該当する学生は、学生であることだけを理由に被保険者から外すことはできません。
自社の正社員の所定労働時間と所定労働日数を把握し、学生アルバイトの契約条件と比較できるようにしておく必要があります。
実態と異なる短時間契約を作成しない
保険加入を避ける目的で、実際の勤務予定より短い所定労働時間を契約書に記載する運用は避けなければなりません。契約では週20時間未満でも、毎週のように基準を超える勤務が続いている場合は、勤務実態を確認して加入要否を見直します。
シフトの増加が一時的なものか、今後も継続するものかを記録し、恒常化している場合は雇用契約の変更も検討しましょう。
卒業・休学・復学の情報を定期的に確認する
学生の在学状況は、採用後に変化する可能性があります。休学によって学生除外の対象ではなくなったり、卒業後の継続勤務によって雇用保険への加入が必要になったりするケースがあります。
採用時だけでなく、学期の切り替えや契約更新の時期に、次の項目を確認するとよいでしょう。
- 卒業予定日と卒業後の勤務予定
- 休学・復学の有無
- 学校の課程の変更
- 所定労働時間と所定労働日数の変更
確認内容は、本人の申告日や提出書類とともに記録しておくと、後から判断経緯を説明しやすくなります。
加入漏れが判明した場合は早めに関係機関へ相談する
加入対象者の届出が行われていなかった場合は、そのまま放置せず、ハローワークや管轄の年金事務所へ相談します。社会保険では、資格取得届の未提出が後から判明した場合、資格取得日にさかのぼった手続きが必要になることがあります。
遡及加入によって本人負担分の保険料も発生する可能性があるため、本人への説明や徴収方法を含め、関係機関の案内に沿って対応しましょう。加入漏れを防ぐには、採用・契約変更・在学状況の変更を人事労務担当者へ共有する社内フローを整えることが大切です。
学生アルバイトの加入条件を正しく確認して手続きを行おう
学生アルバイトであっても、勤務条件や在学状況によっては雇用保険・社会保険への加入が必要です。「学生だから対象外」「親の扶養に入っているから加入不要」と一律に判断せず、制度ごとの要件を確認しなければなりません。
特に注意したいのは、雇用保険と社会保険で学生の扱いが異なる点です。昼間学生は雇用保険では原則として適用除外ですが、社会保険では通常の労働者の4分の3以上働く場合、学生でも加入対象になります。
採用時や契約変更時には、次の順番で確認すると判断しやすくなります。
- 昼間・夜間・定時制・通信制などの在学状況を確認する
- 休学中か、卒業後も継続して勤務する予定があるかを確認する
- 週の所定労働時間と月の所定労働日数を確認する
- 雇用期間と契約更新の見込みを確認する
- 雇用保険と社会保険をそれぞれ別に判定する
- 加入対象となった日から期限内に資格取得手続きを行う
採用時に加入対象外だった学生でも、休学や卒業、シフト増加、雇用契約の変更によって途中から加入要件を満たすことがあります。そのため、学期の切り替えや契約更新の時期に、在学状況と勤務条件を定期的に見直す運用が必要です。
また、本人が扶養内勤務を希望していても、法令上の加入要件を満たせば会社は手続きを省略できません。加入による給与や扶養への影響を丁寧に説明しつつ、会社としては客観的な勤務条件に基づいて対応しましょう。
判断が難しい場合や加入漏れが判明した場合は、雇用保険については管轄のハローワーク、社会保険については年金事務所や加入する健康保険組合へ早めに相談することが大切です。確認項目と判定手順を社内で統一しておけば、担当者による判断のばらつきを抑え、適切な労務管理につなげられます。
この記事の執筆者

- 社会保険労務士法人ステディ 代表社員
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